

風や水などのちからと出合って、はじめて完成する彫刻――。
新宮晋さんの作品は、目に見えにくい自然の姿をふっと浮き彫りにして、
ひとが自然とともに生きていることに気づかせてくれます。
「風の彫刻家」と呼ぶひとがいることにうなずけます。
彫刻だけでなく、舞台作品や数多く手がける絵本にもその世界観はしっかりと生きています。
そんな新宮さんが「フランスでポップアップ絵本をつくった」と聞いて、
わたしたちはその絵本と出合うことをずっとたのしみにしてきました。
やっと、ご紹介できます。タイトルは、『ちいさなふしぎな森』。
色とりどりの紙が立ち上がり、動き、美しい森が生まれます。
そして、実際の自然を作品の一部に取り入れた最後のページに、きっと息をのむはずです。
木々からの木洩れ日。夜ならば、星のひかりが地にきらめくような……。圧巻です。
こんなに美しいPOP UP絵本が、かつてあったでしょうか!


<発刊にあたり、新宮さんがメッセージを寄せてくださいました>

パリの画材店で美しい色とりどりの色紙の棚を見ていたとき、突然、紙を組み合わせた彫刻のような本のイメージが浮かんだ。
早速好きな色ばかり買い込んで、まるで子供の頃よく遊んだ工作のように、ノリとハサミで作り始めると、色と形が次々生み出す世界に、ぼくはすっかり夢中になった。そんな楽しい作業が一冊の本にまとまるなんて、あの時は思ってもいなかった。『ちいさなふしぎな森』は、ぼくが生まれて初めて作ったポップアップ・ブックだ。
しんぐう・すすむ●東京芸術大学絵画学科卒業後、イタリアに留学。6年間の滞在のうちに、平面から立体へと、さらに動く造形へと移行。以来、風や水といった自然エネルギーで動く作品を世界各地につくり続けている。オリジナルの舞台作品も発表。絵本に『いちご』『くも』『旅する蝶』など。
>デビュー作の『いちご』について、新宮晋さんのメッセージを[絵本ブログ]で紹介しています。