はいくないきもの通信

こんにちは。『はいくないきもの』は、もう手に取っていただけましたか?
「このリズムは何?」「この不思議ないきものは??」と、たくさんの感想をありがとうございます。
この絵本については、みなさんにお伝えしたいことがたくさんありすぎて・・・・・・という担当編集者から、はいくないきもの通信をお届けすることにしました。
まだ知らない、読んでいないという方も、おやつでも食べながらお読みいただければうれしいです。



原画はなんと、紙ではなくアクリル板に描かれています。
何だか「いきもの」が浮いているように見えます。
(ミナ・ペルホネン白金店にて)



はいくないきもの
皆川明/絵 谷川俊太郎/文
クレヨンハウス/刊
1,296円(税込)

ふしぎないきものと俳句のひみつ

『はいくないきもの』は、皆川 明さんが絵を描き、そこに谷川俊太郎さんがことばをつけるという順番で、できあがりました。
皆川さんはファッションブランド「ミナ ペルホネン」のデザイナー。ファンの方も多いかと思いますが、今回の絵は、お洋服とはまた違う印象です。「このいきものたちは、空を飛びたい、においを嗅ぎたいといった強い思いをもっているうちに、耳や鼻が大きくなるなど、変わった姿になったんです」と皆川さん。
絵本のための絵を描くには、まず、自分の手をふだんの「仕事の手」から解放する必要があったと言います。同じ気持ちのまま描き上げられるよう、夕方から明け方までの時間で、12枚を一気に描いたのだと。
「自分の思いを貫き、やりたいことをした結果、まわりと違ってもいいと思うんです。その違和感が、いずれは、そのひとのかたちとして受け入れられます。
この絵本を通じて、〈何かひとつに強くこだわる生き方〉をしていいのだと、子どもたちが感じてくれたらうれしいですね」
一方の谷川さんは、「すごく前衛的な絵が届いたから、びっくりしましたよ!」と。
「皆川さんの違う一面が出ていますよね。どんなことばをつけたらいいんだろうと途方に暮れつつ、思いついたのが俳句。五七五のリズムなら、みんな、からだに染みついていて抵抗なく読めるでしょう?今回の俳句は、少しだけ日常のことばが入っているけれど、あとはナンセンスです」




左:皆川明さん、右:谷川俊太郎さん

いろいろな声の出し方を誘いたい

そんな谷川さんの「俳句」を受け取ったとき、皆川さんは、「子どもたちがけらけら笑って読むようすが想像できた」と。
絵本の文字に大小があったり、ちょっと揺らいでいるのは、皆川さんのアイデアです。
「手描きでこの俳句を書いてみたら、自然とそうなりました。読むひとの、いろいろな声の出し方を誘えたらいいですね」
お気づきかもしれませんが、この俳句、前のページの最後が次のページの最初とつながっているんです。それがまた、1 冊の絵本をのんびりと歩くようなリズムにもなっています。もしかして、タイトルの「はいく」には英語の「hike(ハイキングする)」の意味もあったりするのでしょうか? と尋ねてみると……。
「ふふふ。そうそう。禅を学んだアメリカの詩人、ゲーリー・スナイダーも、『ヒッチハイク』という詩を書いているしね」と、少し冗談っぽく谷川さん。
さて、情報過多の現代。「無知」でいることが許されない雰囲気がある、と皆川さん。若いひとがあまり旅をしない背景にも、無知への恐怖があるのではないか、と。谷川さんも、「若いうちから、老成しちゃってるのかもね」と。「そんななか、あかちゃん時代は、〈無知〉でいられる貴重なときだと思います。だからこそ、感性に素直に響く絵本を届けたいですね」と皆川さん。
谷川さんと皆川さんのように、いつも新しい冒険ができる( !?)大人でいたいみなさん、この絵本で、あかちゃんと一緒に、ナンセンスなイマジネーションの世界をハイキングしませんか!


皆川明(みながわあきら)
ファッションデザイナー。オリジナルの図案による生地から服づくりをはじめ、1995年、自身のブランド「ミナ」を設立。2003年にブランド名を「ミナ ペルホネン」とする。衣服のほか、家具、器なども発表し、青森県立美術館や東京スカイツリー®のユニフォームデザインも手がけている。著書に『ミナ ペルホネンの時のかさなり』(文化出版局)など。

谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)
詩人。21歳のとき、詩集『二十億光年の孤独』を刊行。以来、子どもの本、作詞、シナリオ、翻訳など幅広く活躍。著書に『谷川俊太郎詩集』(思潮社)、『みみをすます』『ことばあそびうた』(ともに福音館書店)、『恐竜人間』(パルコ)、翻訳に『スイミー』(好学社)など多数。多彩な画家、アーティストとつくる「あかちゃんから絵本」シリーズは、本作が12冊目。