松谷みよ子さんインタビュー




いないいないばあ
松谷みよ子/文 瀬川康男/絵
童心社/刊
756円(税込)



のせてのせて
松谷みよ子/文 東光寺啓/絵
童心社/刊
756円(税込)

※「月刊クーヨン」2007年8月号増刊 絵本スクールP122より転載

むかしむかしから、ずーっと語り継がれてきたお話は、たくさんの子どもたちに選ばれ、磨き抜かれてきた大ロングセラー!
昔話、わらい話、伝説、世間話・・・・・・民話に惹かれ、日本の各地を訪ねた松谷さんに、子どもに民話を届けたい理由をお聞きしました。


わたしがなぜ民話を書くかというと、村を訪ねてその語りに魅せられ、民話と重なる祖先の顔に魅せられたからですね。
 といっても、わたしが子どものときに聞いたのは、『しっぺいたろう』という民話だけ。お手伝いに来ていたおねえちゃんに、髪を洗ってもらいながら聞いて、近所の子たちと劇あそびをしましたっけ。

 おもしろいことに孫が1歳3ヶ月くらのときにその『しっぺいたろう』の絵本をとても好きになりました。10ヶ月くらいのときのお気に入りは『いないいないばあ』で、お誕生日のころには『のせてのせて』、そのあといきなり、大人っぽい『しっぺいたろう』になったんです。まだちいさかったので、「おぼうさんがいてね、お山の中でお泊りするところがなくて、お堂に泊まったんだって。そうしたら・・・・・・」と簡単に話したら、絵本を抱いて寝るほど好きになっちゃった。あかちゃんでも、こういう民話絵本を好きになるんですね。
 それから毎日のように「詠んで」とせがまれて・・・・・・。そのころ、孫はわたしの家にあった鬼のお面をとてもこわがっていて、「ガオ(鬼のこと)が来るよ」と言えば言うことを聞いていたですが、ある日のこと、「もうガオはいい!」と親に宣言してから、その手が通じなくなってしまった(笑)。
その話を、幼児の心理に詳しい中村博さんにしたら、「それは、からだの中にしっぺいたろうの勇気が流れるなったからだよ」と。民話をたっぷり聞くと、こころが育つんだなと実感しました。児童文学作家の宮川ひろさんが、「語りはこころの母乳です」と言うのですが、本当にその通りだと思います。

語りを聞いていると、こころの中にいろいろなイメージが広がります。もし語るのが難しければ、読み聞かせでもいいから、子どもたちにたくさん読んであげてほしいですね。難しいことばが出てきても、あまり心配しすぎたり、途中で注釈をつけすぎたりしないで素直に語っていると、子どもは聞いてるうちにだんだんわかってくるものです。



さるのひとりごと
松谷みよ子/文 司修/絵
童心社/刊
1,512円(税込)



うりこひめ
松谷みよ子/文 司修/絵
童心社/刊
1,188円(税込)

宇宙には不条理もよろこびも

民話は残酷であるとか、教訓的であるとか、どこか一ヶ所をつまみ出して、「これはけしからん」と目くじらを立てることはないと思います。民話の世界は、もっともっと豊かですよ。恐ろしい山姥やまんばかと思ったら、錦を織ってくれたりする。そういう二面性もちゃんと描いているでしょう?豊かな幸をもたらす海も、嵐の日に出ていけば死をもたらします。民話そのものを、大きな海や宇宙であると考えれば、その中にはかわいらしい野の花のようなお話もあるし、不条理なお話もあるわけです。
 『さるのひとりごと』のさるにしても、かにをつぶしてけしからんようですけれど、子どもたちは、「さる、かわいそう」と思うことができる。子どもたちのほうがよっぽど豊かに民話を受け止めますね。

そもそも世の中は、民話よりも残酷です。誘拐や殺人が多数起こるなかで、子どもたちに「こわいひとがいるから気をつけなさい」と言うのもいいけれど、たとえば、だからいまこそ『うりこひめ』を、と思うのです。戸口にだれかがやってきたとき、つめの先ほどでも戸を開けたら入ってきちゃうんだよと、『うりこひめ』を語っているうちに、自然に話していくことができます。そういう世の中の不条理な部分を、ちいさいときから、知っているほうがいいと思うんですね。そして、それに立ち向かう勇気を、自分の中にたくわえていく・・・・・・。民話はその助けになると思うのです。


まちんと
松谷みよ子/文  司修/絵
偕成社/刊
1,296円(税込)

一人ひとりが民話の語り手です

民話は、遠い遠い祖先が語り継いでくれたものです。それを考えると、きちんと受け取って、次の世代に渡さなくては、と思います。また、民話は、昔の話だけではありません。たとえば『まちんと』や『ぼうさまになったからす』は、戦争を語り継ぐ、現代の民話だと思っています。わたしたちの暮らしの中からは、いまも民話が生まれていて、わたしたち一人ひとりは、無意識のうちに、民話の語り手なんですよ。




クレヨンハウス東京店1F 子どもの本売り場


松谷みよ子
1926年、東京都に生まれる。
戦争中に童話を書きはじめ、作家の坪田譲治さんに師事。『龍の子太郎』(講談社)などの民話、『ちいさいモモちゃん』シリーズ(講談社)などの童話、『ふたりのイーダ』(講談社)など平和を願う児童文学など多くの作品を発表しました。 自宅の庭に、文庫「本と人形の家」を開館。責任編集の同人誌「びわの実ノート」は、2007年秋、惜しまれながら終刊。エッセイや小説、詩集など、その活躍は幅広く、1987年に出版された『わたしのいもうと』(偕成社)は、いじめ問題で最近ふたたび注目を集め、学校の授業などで取り扱われています。
2015年2月28日逝去。89歳でした。

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