佐藤さとるさん



1959年に世に出て以来54年、日本のファンタジーの古典として読まれ続けている「コロボックル」シリーズ。
この希代のロングセラーが生まれるきっかけとなったのは、
作者、佐藤さとるさんの手でつくられた私家版『だれも知らない小さな国』でした。

内々でしか読まれていなかったこの「一番最初のコロボックル」が、
昨年、数量限定で復刻されましたが、すぐに売り切れてしまい、
くやしい思いをしたコロボックルファンも多かったことと思います。

そこでこの度、佐藤さんにお願いをして、少しだけ重版していただけることになりました!
クレヨンハウスでしか手に入らない貴重なお品です。
刊行によせての佐藤さんのインタビューもぜひご覧ください

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『私家版復刻 だれも知らない小さな国』  『ブドウ屋敷文書の謎』
ケース入り・2冊セット  価格1,728円 

原書を複写印刷した復刻版は、タイプ印刷によるかすれまで再現されています。
書き下ろしコロボックル物語『ブドウ屋敷文書の謎』の表紙絵は、なんと佐藤さん自身によるもの!



●佐藤さとるさんインタビュー

 ―まずは、私家版『だれも知らない小さな国』はどのようにしてつくられたのですか。

 ぼくは童話をずっと書きたかったんだけど、イギリスなんかの童話を読んでいると、フェアリーってものが面白くってね。日本のフェアリーを書きたい、日本にだってフェアリーぐらいいるだろうって探したんだけど、これがいなかった。

 単独では、例えば一寸法師のような話はいくつかあるんだけども、いわゆる小人族、妖精族みたいなものを書いたものがないんです。そこで、いないならつくっちゃえばいいじゃないか、って思いついたんですよ。

 そう思いついたのが17歳で、書いたのが30歳です。十数年かかった。その間にいくつか試作品みたいなものを書いてるんですけどね。話中話みたいなかたちで、虫の姿をさせたりして。

 でも、それじゃあやっぱり物足りなくて、実際にそこに本当にいる話を書きたいと。そうなるとやっぱり人間のかたちをしていないとつまらない。じゃあ、子どもが知ってるコロボックルだなって。たまたまうちの親父もおふくろも北海道ですから、コロボックルの話は聞いていました。

 そうして原稿ができた頃、ぼくの中学校時代の友人がタイプ印刷屋をはじめたって言うんです。じゃあ、お前のところでつくってくれないか、ということになった。貯金をはたいてね。途中、進行の経過を報告しにきた友人が、「困ったことになっている」って言うんだよ。一番腕のいいタイピスト(女性)に打たせているんだけど、手が止まっちゃって困るって。先を読んじゃってね。これは大変なほめことばだぞって思いました。だから、彼女はぼくの最初の外部の読者なんです。会ったことはないんですけどね。

 出来上がったものを平塚武二さんのところへ持っていったら、どこかからボロボロの手帳を持ってきて、ここへ送れと言って新聞社やら出版社やらを読み上げてくれるんですよ。それを必死で書き取って、送ったんです。毎日20部とか30部とかを郵便局へ担いで持って行って、3日くらいかかって100冊近く送りました。そうしたら90通以上の返事が来たんです。その中で、講談社の当時の編集部長さんが速達をくれて、「本当の本にしないか」って。これは本当の本じゃないらしいんだな(笑)。その2カ月後、講談社から『だれも知らない小さな国』が刊行されました。




佐藤さんお手持ちの私家版。
奥付は、発行所が「コロボックル通信社」になっています。
「(シリーズの)第2巻で、“コロボックル通信社”ができるよね。
それで、今度の復刻版をつくったのは、
“コロボックル書房”って言うんだ」
―私家版の表紙を描いているのは、木下欣久さんだそうですね。

 このひとは抒情画家の松本かつぢのお弟子さんで、非常に才能のあるひとだったんですけど、「おれは画家じゃない、画工になる、絵師になる」って言って、一生を通したひとでね。故人なんですけれども。

 ぼくが(コロボックルを)書いたときは、編集者として広島図書というところから実業之日本社の『少女の友』編集部に移ったところだったんですが、その付録を担当していたのが木下くんだった。

 たまたまぼくが、書いたものを自分で本にするんだって話したら、「表紙はどんなんだ」って言うので見せたんです。もともとはぼくが描いた絵だったんです。そうしたら「ちょっと貸せ」って言ってね、仕上げてくれたんですよ。題字も彼の字ですよ。

―私家版の表紙に「新日本伝説」とありますが。

 当時、「ファンタジー」ってことばがなかったんだ。この本が出て、ファンタジーということばが出来た。英語だからないわけじゃないんだけど、いわゆる「おとぎばなし」って意味でしかなかった。

 文学的な意味では、ファンタジーっていうのはひと口にいうと、「ありえないことをあり得るように書く」。それを荒唐無稽じゃないようにするにはいろんな制約があるんですけど、その制約を乗り越えて書くひとが日本にはいなくて。ぼくはそういうことをまったく知らなくて、全然別の道筋からつくっていった。

 本当はいない小人を、ひとりの人間が発見する話を書いたら、それは本当は嘘ですよね。嘘なんだけど、ばれないようにぜんぶフタをしながらつくっていったら、読んでくと本当にいるみたいなんだよね。それを徹底的にやってみたら、期せずしてファンタジーだったわけ。ファンタジーの理論とぴったり一致した。

 ディテールを積み上げて、真実を積み上げて壮大な嘘をつく。虚構の中に真理がある。それがファンタジー。家内がね、「あなたは地獄へ行くんですよ」って。たくさんの子どもを、おとなもね、だましてきたんだから天国にはとてもいけない(笑)。それは、ほめことばでもあると思っていますがね。

―付録の『ブドウ屋敷文書の謎』はいつ書かれたんですか。

 昨年の夏です。クレヨンハウスさんには打ち明けておくけど(笑)、作者はコロボックルです。コロボックルのひとりが、わたしの『小さな人のむかしの話』(講談社)が出た後に真似をして書いた。で、わたしはおもに解説を書いてるんですよ。コロボックルがね、それを彼らの新聞にももちろん発表したんだけど、今度単行本にするっていうんで解説を頼みにきたんだよ。依頼されたんでしょうがなくね(笑)。私家版は最初のコロボックルでしょ、そして最新のコロボックルが読める。

 表紙の絵はぼくが描きました。絵は商売人じゃないから大いに自慢することにしてるんだけどね、すごくうまくかけたよ。絵描きになりたかったんだ、本当は。



―「コロボックル」シリーズは、登場する人物、特に女性は、コロボックルも人間も聡明で行動力がありますね。

 よく言われるんですよ、「佐藤くんの書く登場人物はみんな変人だ」って。変人とはなんだ、個性が強いっていうんじゃないの、って言うんですが、平凡にみえるひとだって、きちっと書くときちっとした個性がある。そこに触れられたら怒るよっていう、逆鱗みたいなところもある。そういうところをちゃんと見ないといけないんじゃないのって。ファンタジーのなかで不思議を許容できる人格っていうのはつくり上げていくのが難しいね。人格として非常に幅の広い、頭のいいすぐれたひとでないと、非日常的なことが起こるということを許容できない。それに耐えられる太い神経と、一方に繊細な神経を持ってないとね。そういうひとってのは、やっぱりあんまり多くないよね。

 女の子については、はじめ男の子ばっかり書いてたら、手紙がくるんですよ。どうして女の子が、って。そりゃそうだなって思って、それで意識して女の子を活躍させたんです。最後に5巻を書くときはもう、人間の主人公も、コロボックルの主人公も女の子にして仕上げた。

 ところがそれが失敗でね。正子っていう子が、図書館になんか勤めちゃった。臨時なんだけど児童書係なんかをやらされる。で、その頃はすでにぼくの本が4冊出ているんで、そこの棚にないっていうのはおかしいんだな。架空の世界だから、この世界にはぼくの本はないって決めておけば、それはそれで通っちゃうんだけど、ファンタジーとしては納得できないところがある。自分としては負けたような感じがして。こうなった以上は、ぼくの作品をそこへ出しちゃおうって決めた。それで矛盾が起こらないようにつくるにはどうしたらいいか、1巻から4巻までの綿密な年表をつくったんですよ。もともと最終的にはそういうことが起こるだろうなと思って考えてあったんですけどね。でもそれをきちんとやって。

 最終巻が12年もかかったのはそのせいです。大失敗だったんだよ、司書にしたのは(笑)。でもおかげでそれをやってね、ぼくとしては第5巻が一番面白い。

―有川浩さんが「コロボックル」シリーズを引き継いで書くということになりましたが、有川さんが書くものに関しては、完全におまかせなんですか?

ご存知のように、有川さんってひとは、現代のストーリーテラーとしては第一級だね。だから何をつくってくるかね。非常に名誉なことだってぼくは思うんだけど。ぼくはもう書けないからね。書けないし、書かないし。ただ、ひとつだけ書いた。それが今回の付録です。
(2012年12月 取材:クレヨンハウス子どもの本売り場 撮影:office 北北西 矢部ひとみ)



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『ブドウ屋敷文書の謎』

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