第7回「書く前に大切なこと」|発達を促すセラピー・トイ
発達を促すセラピー・トイ [月刊クーヨン]連載より
近年、発達障がい、と診断される子どもが増えています。
あかちゃんから、あそびを通して、段々と「ひと」になっていく……。その人間の発達観をベースとしたセラピー教具「TAG TOY」開発者であり、教育心理学博士のメストネック博士にお話を伺いました。発達障がいの原因のひとつに「あそびの不足」がある、とメストネック博士は言います。
[月刊クーヨン(クレヨンハウス/刊)2026年10月号]より転載
第7回 書く前に大切なこと
TAG-TOY「幾何学的指先運動練習盤」
子どもに早く読み書きのスキルを経験させたいと考えるのは、親として自然なことです。しかし子どもの発達について知ると、書く行為そのものよりも、書く力を支えるからだの発達のほうがとても大切だということを感じるでしょう。
子どもの腕や手先やからだに、しなやかな腕の動きや丸みを書く(描く)とはどういった筋肉の運動が必要なのかを経験させてあげるには、この「幾何学的指先運動練習盤」が力を発揮します。
運筆は指先と手首のしなやかさが必要です
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この練習盤であそぶことで、からだや脳が、書く力を支える全身の発達運動を促します。
直線、丸、四角、三角それぞれについたノブをつまみ、動かすと、かたちに沿った手の動きを導いてくれます。このあそびをくり返すことで、正確な幾何学的なかたちを書く運動を、手から脳へと自然とつなげる経験をします。
じつはこのとき、見る(視覚)・触れる(触覚)・動かす(運動感覚)という3つの感覚を同時に使い、目でかたちを追いながらさまざまな線やかたちを脳内にイメージしています。
このように、視覚・触覚・運動感覚を同時に使う運動は、鉛筆で文字を書く力や筆やクレヨン、フェルトペンなどを使って絵を描く力の土台にもなります。 

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つまり、鉛筆を持つ前の段階で大切なことは、手首や指先の動きを何度も使いながらコントロールする力や、目と手を協応させ使う力が育つこと。そして運筆の基礎となる全身運動を、0歳から、たのしいと感じながらたくさん経験することです。大人はそのための機会や場所、時間の用意を手伝いましょう。
そういった意味でも新生児から見られるすべての発達が重要な土台となるわけです。

幾何学的指先運動練習盤
子どもがはじめて書くこと、描くことの基礎を養う練習盤です。
持ちやすいノブ(取っ手)をつまんで、丸や四角のかたちに切られた溝に沿って、取っ手を上下左右に動かします。この動作で、手の筋肉運動とともに、視覚、触覚、運動感覚を体験します。こうした体験は、書くことの困難な子どもにとって、書くための基本的なスキルの習得となります。
発達目標
(あそんでいるときに育つ発達)
● 文字を書いたり絵を描いたりする際の指先の動きが経験できる。
● 3次元的で多感覚的な活動を通して、2次元の形状に関する強いイメージをこころの中に形成する。
● 書くことに関わる視覚、触覚、運動感覚の各感覚様式を調整する。
★ リハビリテーション患者の細かい運動能力の再訓練にも役立ちます。
あそび方
1. 指先でノブをつかんで線にそって動かすことをおしえてください。
2. らくに回転しますが、最初はゆっくりと線にそって動かし、慣れてくると早く動かすようにおしえてください。
3. 運動的知能といわれる能力を養います。
同じようなあそびができるおもちゃ pick up
Laurence M.Mestyanek(ラリー・メストネック)
南カリフォルニア大学でギルフォード&メーカー博士より知能構造理論を学び、教育心理学博士号を取得。1976年に、障がい児や軽度発達障がい児、学習困難をもつ子どものための「セラピー玩具」の開発をスタートし、TAG(Think And Grow)社を設立。日本では、国際臨床保育研究所が中心となって、メストネック博士のセラピー玩具を広めている。
https://www.tagtoys.com/勝山結夢(かつやま・ゆむ)
NPO法人国際臨床保育研究所・所長。創立者辻井正さんのもとで、おもに乳幼児の教育理論をまなび、セラピー教具の必要性にいちはやく気づき、普及活動に従事。現在も、保育者向けの保育法やセラピー教具をつかった研修に従事。この連載では、メストネック博士の原稿の翻訳を担当されている。
http://www.kiccc.or.jp/
