第8回「転がり落ちてくる数の箱」|発達を促すセラピー・トイ

発達を促すセラピー・トイ [月刊クーヨン]連載より

近年、発達障がい、と診断される子どもが増えています。
あかちゃんから、あそびを通して、段々と「ひと」になっていく……。その人間の発達観をベースとしたセラピー教具「TAG TOY」開発者であり、教育心理学博士のメストネック博士にお話を伺いました。発達障がいの原因のひとつに「あそびの不足」がある、とメストネック博士は言います。

[月刊クーヨン(クレヨンハウス/刊)2026年11月号]より転載

第8回 転がり落ちてくる数の箱

「何度もあそびたい!」をくすぐるタグ・トイ社不朽の数あそび

    転がり落ちてくる数の箱は、デザインして販売をはじめた当初は、これほどまでに長く、多くの子どもに愛され続けるタグ・トイ社ロングセラーのひとつになるとは思ってもいませんでした。
    数の力は実数を何度もかぞえるなかで育つため、子どもがあそびながら数に触れられること、何度もくり返したくなるデザインにすることにこだわりつくりました。
    横についている取っ手を引っ張ると、数字に合わせて穴に差した木のペグがストンと真下に落ちて、転がり出てくる。そのしくみが分かった子どもは、もう一度ペグを差し込み、取っ手を引き、くり返しあそびます。
    長く愛されている理由は、「たのしい結果が起こることが、もう一度その行動をくり返すための報酬になっている」ということです。

1から10の数を多面的に学びます

  • 1から10の数字とペグを差すための穴があいた木のプレート(10枚)と10個の木ペグに本体というデザインで、この木のプレートを本体にのせてあそびます。はじめは1からあそぶとよいでしょう。1のプレートを本体にのせ、ペグをひとつ差します。じつはこの数字は彫られているので、指でなぞることができます。最後に取っ手を引き、ペグを落とします。そばにいる大人は、子どもがペグを差す際に「ひとつ、ふたつ……」とかぞえながらあそぶと、なおよいでしょう。 1から2、2から3と数のプレートをのせ替えあそぶことで、量が増える感覚を覚えます。

  • テキスト
  • テキスト
  • 何度も1から10をくり返しあそぶなかで、数字とその数字の量との関連、転がる際の音の変化(音量)を感じ、数を多面的に学びます。「転がるときの音がペグの数によってちがうなあ」「2よりも7のほうがたくさんペグを差し込むなあ」など目と手の協調運動のみならず、それぞれに「いち」や「さん」と名前があることや、数字(記号)と数量を結びつける機会があることで、数概念の土台をより深く学んでいると言えるわけです
     この深まりこそが、子どもにとって大きな意味をもつ「学ぶことはたのしいことなんだ」と感じる一歩となります。

転がり落ちてくる数の箱

転がり落ちてくる数の箱

10枚の交換可能な数字プレートは、それぞれ箱の上部にセットできます。子どもは、最初は誰かの助けを借りながら、次にひとりで、数字の横にある穴にペグを差し込みながら声に出して数えます。数え終え、箱の側面にあるつまみを引くと、ペグが落ちてきます。この瞬間をたのしみに、子どもは同じ数字で何度もこのあそびをくり返し、最終的にはそれぞれの数字を練習し、数字記号に関連付けられた具体的な量を認識できるようになります。

発達目標
(あそんでいるときに育つ発達)

●数字の概念を知る
●1から10までかぞえることを学ぶ
●量の概念を導入する

あそび方

1. 板の穴を触ります。そこにペグを入れます。
2. 入れたペグの数と横の数字が同じ意味だとおしえます。
3. ペグを差し込んだら取っ手を引っ張ります。中板がずれてペグが落ちます。
4. 転がり落ちてくるペグを声に出してかぞえます。
5. 上部で差し込んだペグの数と転がり落ちたペグの数が同じだと分かることが重要です。

  • Laurence M.Mestyanek(ラリー・メストネック)
    南カリフォルニア大学でギルフォード&メーカー博士より知能構造理論を学び、教育心理学博士号を取得。1976年に、障がい児や軽度発達障がい児、学習困難をもつ子どものための「セラピー玩具」の開発をスタートし、TAG(Think And Grow)社を設立。日本では、国際臨床保育研究所が中心となって、メストネック博士のセラピー玩具を広めている。
    https://www.tagtoys.com/

  • 勝山結夢(かつやま・ゆむ)
    NPO法人国際臨床保育研究所・所長。創立者辻井正さんのもとで、おもに乳幼児の教育理論をまなび、セラピー教具の必要性にいちはやく気づき、普及活動に従事。現在も、保育者向けの保育法やセラピー教具をつかった研修に従事。この連載では、メストネック博士の原稿の翻訳を担当されている。
    http://www.kiccc.or.jp/

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