【講演会レポート】蟹江杏さん(絵本作家)/子どもの本の学校 34期

「子どもの本の学校」 34期 蟹江杏さん

1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2024年で34期を迎えました。
子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。
“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。

2025年6月の講師は、蟹江杏さん

蟹江杏(かにえ・あんず)さんは……
東京都日野市出身。「自由の森学園」卒業。ロンドンで版画を学ぶ。全国の美術館や百貨店、画廊などで個展を開催。東日本大震災以降は、被災地の子どもたちに絵本・画材を届ける活動や、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立。文部科学省復興教育支援事業のコーディネーターをつとめるなど、全国の子どもたちとアートをつなぐ活動を行なっている。絵本は、初のシリーズ絵本「ユキヒラさん」(いわまタケツグ/文 クレヨンハウス)、最新作『わたしのバラ はじめて詩を書いたとき』(こやま峰子/文 汐文社)をはじめ、『ハナはへびがすき』(福音館書店)、『おーい』(ほるぷ出版)ほか。小説『あの空の色がほしい』(河出書房新社)、エッセイ『eyes (アイズ)―25thbeing an artist-』(東海教育研究所)など多数。アトリエANZ https://atelieranz.jp

「蟹江杏作品展」が軽井沢現代美術館で開催中!
軽井沢にもアトリエを構える蟹江さん。同じく軽井沢にある軽井沢現代美術館では、
毎年「蟹江杏作品展」が開催されています。今年は9月23日(火)までの開催予定です。

実は「蟹江杏作品展」の終了日と同じ9月23日をもって、軽井沢現代美術館は惜しくも閉館となります。
ぜひ、この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

詳しく知りたい方は、軽井沢現代美術館の公式HPへ!



講演会タイトル「描く細胞」

「わたしは、もう細胞レベルで絵を描くのが好きなんです」と話す、蟹江杏さん。
「どれぐらい好きかと申しますと、1年に未発表作品を含めて約500作品を描いています。朝8時くらいに起きて、もう15分後ぐらいから描きはじめて、1日通しで描くことも多いです。打ち合わせや仕事の約束があればもちろん出かけることもありますが、そうでなければずっと描いています。お昼ごはんも、スタッフに言われないと忘れちゃう。ただ、夕方5時ぐらいになるとお酒飲みたいなという気持ちになって、手を止めます。その後、1滴でも飲んだらもう描きません。若い頃は飲んでから描いたこともありますが、そういう絵は朝起きてから見ると、大抵がっかりするので、いまは飲んだ後に描くことはしないようにしています。うちはわたしを含めてスタッフ数名でやっているちいさい事務所(アトリエANZ)で、日曜日はかならず休みにしています。だから日曜日になると、休みだ! と思って、じゃあお絵描きしようと考えます。仕事とあそびの間がない感じの生活をしています。
 わたしは一人っ子で、両親が働いていたのでひとりであそぶことも多かったです。だからなのか、絵を描きはじめるのも早かったと思います。4歳になったときに、父が子ども部屋の壁紙を全部模造紙にしてくれたんです。その模造紙が絵でいっぱいになると、新しい紙に貼り替えてくれました。中学生の頃まで続いていたのですが、これのおかげで、ちいさい紙に手だけで描くんじゃなくて、肩や腰を使って大きく描くっていうことがなんとなく身についていたんだと思います。父に感謝しています。母は毎日のように絵本を読んでくれていて、だからわたしがはじめてしゃべったことばは『きよいここり』でした。これ、当時毎日読んでもらっていた、ブルーナの『きいろいことり』(福音館書店)のことだったんです。この話を聞いたとき、母に感謝するとともに、絵本ってすごいなって思ったんです。そんなわたしが画家として発表している絵を見た編集者から依頼をいただくかたちで、いまみたいに絵本に関わるようになりました。
 とはいえ、わたしはあくまで画家です。自分が描いた絵をみなさんに買っていただいて、生活しています。同時に、みなさんにはもっと気軽に、絵を『所有』してもらいたいなと思っています。コーヒー1杯、本1冊を買うのと同じ感覚で、本当は絵を買ってもらえるようになりたい。絵はそんなに特別なものではなくて、みなさんの日常を豊かにしてくれるものなんだよ、と。大量印刷のポスターばかり飾られてしまうと食べていけなくなるという理由もありますが、画家という職業があること、画家として暮らしている人間がいることをアピールする意味でも、こうやって絵を『所有する』ということばでお伝えしています」(蟹江さん)
 印刷することで多くの読者に届く絵本と、世界に1点しかないからこその愛着が生まれる絵。あなたが好きな蟹江さんの作品を、ぜひお手元に!



「子どもの本の学校」 34期 蟹江杏さん

クレヨンハウスから出版されている「ユキヒラさん」シリーズは、クレヨンハウスの「最古参スタッフ」でもある、いわまタケツグからの依頼で生まれました。
「初めて打ち合わせをしたときも、いわまさんは絵本の話をあんまりしないで、ずっと野菜スープ(*)の話をしてらっしゃいました。有機野菜だけを水で煮込んだスープが何より健康に良くて、これをレトルトにして売りたいというのを、すごく情熱的に語るわけです。わざわざ軽井沢のアトリエまで来て。ちなみにそのスープ、実際に商品化されています。私も飲んでいます」(蟹江さん)

オーガニック
ファイトケミカルスープはこちら

講演で紹介された本の一部をご紹介

「絵本について細かい設定をお聞きするよりも、野菜スープの話を聞いているほうが、作家としてのいわまさんが伝えたいことがわかった印象深い作品です」(蟹江さん)

『ユキヒラさんとおなかのすいたゾウさん』
『ユキヒラさんとおなかのすいたキリンさん』
『ユキヒラさんとおなかのすいたクジラさん』
いわまタケツグ/文 蟹江杏/絵
クレヨンハウス/刊 各2,640円(税込)

ユキヒラさんシリーズ
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限定サインカードは、参加者だけの特典です

「子どもの本の学校」 34期 蟹江杏さん
「子どもの本の学校」 34期 蟹江杏さん

講演会終了後にはサイン会を開催。間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!

オンライン視聴の方は、対象書籍ご購入で、描き下ろしの特別サインカードをプレゼント!

蟹江杏さんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!

一度、拝見すると心惹かれて、忘れられなくて、心の奥深い部分がキュンとなるような蟹江杏さんの絵が好きです。お話もとても楽しくて素敵でした。(女性・長野県)

「ハナはヘビがすき」の本が出版された時、落合さんが大絶賛されていたのがとても印象的だったのでいつかお会いしたい、お話ししたいなーと熱望しておりました。 画面上でしたが、とても嬉しかったです。(女性・東京都)

美しいもの色彩は食からに大変共鳴 作品の所有をはっきりと打ち出すという事にも共感。学生からの紆余曲折 我が家の紆余曲折もナンのそのなのよねと共鳴 楽しかったです(女性・宮城県)




[月刊クーヨン]25年9月号には、書ききれなかった講演内容を掲載!

クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]では、書ききれなかった講演内容を掲載しています。 蟹江杏さんの記事は、2025年9月号(8/1発売)に掲載!あわせてチェックしてくださいね。

過去のレポート記事もご覧ください

過去の講演会のレポート記事を公開しています。「都合が合わず参加できなかった」「講演会の雰囲気や内容をちょっと見てみたい!」……という方は、ぜひチェックしてみてください!

「子どもの本の学校」34期はまだまだ続きます

作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」34期は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!




※本ページに表示されている商品価格等は講演会開催時点のものです。