【講演会レポート】たしろちさとさん(絵本作家)/子どもの本の学校 34期

「子どもの本の学校」 34期 長谷川義史さん&あおきひろえさん

1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2024年で34期を迎えました。
子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。
“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。



2025年8月の講師は、たしろちさとさん

たしろちさとさんは……
大学卒業後、会社勤めを経て絵本づくりをはじめる。2003年、世界7ヶ国語で同時発売された『Chameleons Colors』(日本語版『ぼくはカメレオン』グランまま社)以降、多彩なテーマでの絵本を描き続けている。『5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん』(ほるぷ出版)で第16回日本絵本賞受賞。『ぼく うまれるよ』(アリス館)で第21回 BIB ブラティスラヴァ世界絵本原画展入選 。近刊に『いぬのおまわりさん』(フレーベル館)、『20ぴきのピクニック』(ひかりのくに)、『きょうりゅうのおいしゃさん』(小学館)。ほか著書多数。写真で手に持っているのは、絵本を描くために会いに行ったゾウの写真を使ったお手製パネル!

講演会タイトル「絵本ができるまでのおはなし」

最初の絵本『ぼくはカメレオン』(グランまま社)が世界7ヶ国語で同時発売されるという珍しいご経験をもつ、たしろちさとさん。じつは、雑誌に掲載された『みんなの家』(月刊誌「おおきなポケット」2001年9月号福音館書店)が、20年以上の時を経て絵本『みんなのいえ』(文溪堂)として発売になるという、これまた珍しいご経験をされています。
「わたしは、建てものも生きものも大好きで、ちいさい頃から建てものや生きものの絵を描いてきました。大人になって、一度は就職したものの、絵本をつくることが忘れられず、ラフを持ち込んで見てもらうようになりました。翌日に編集者さんに会いに行くという夜、ふっと、卒業旅行のイタリアで見た荒れ果てた家を思い出して、そこから『荒れ果てた家にひとり、またひとりとやってきて、力を合わせて家を直して、みんなで住みやすい家をつくっていく』というストーリーが浮かんできました。これは今夜ラフを描いて、明日編集者さんに見せなければと徹夜で描き上げました。そうやって、『みんなの家』が動き出したのです。何度も描き直して、ついに月刊誌に掲載されることが決まると、今度は雑誌の形式に合わせてまた描き直して……。とにかく描いて描いて描いて、3年ぐらいかけてつくりました。わたしはラッキーだったと思うのですが、掲載する媒体や出版社内での部署異動の関係で、結果3人の方に担当編集になってもらいました。すると、編集者さんによって『答え』が変わるんです。絵本は『ただひとつの答え』がないんですね。出した『答え』は絶対じゃないけど、そのとき一番いいと思う『答え』を探さなきゃいけないんだとわかりました。
どうにかラフが固まって、ついに本描きに入って……つくっている間は本当にこれに没頭していて、がんばればがんばっただけよくなると信じて、絶対いいものができると思っていました。それが雑誌掲載という形になったということ自体が本当にうれしかったし、みなさんに読んでいただけるようになったことがまたうれしかったです。没頭しすぎて、制作を終えたら、こころにぽっかり穴が空いたように思えました」(たしろさん)
しかし、そのまま絵本として刊行される機会はなく、原画はご自宅にしまわれていました。それを『おふろおじゃまします』(文溪堂)の担当編集者さんの声かけで、あらためて絵本として刊行することになったのだと言います。
「掲載された絵だけではなく、描いたけど使われなかった絵や、全体を描いておいたけれど結局トリミングして一部だけ使われた絵がありました。さらに、雑誌では左開き(縦書き)だったのを、右開き(横書き)にしたいということもあり、デザインをし直してもらった後、あらたに向きを変えて描き直した絵もあります。
終わりのない家づくりの話と、この絵本づくりにかかった年月は、なにか重なるような気がしています。読者のみなさんにも、絵本を読んで、たのしい時間を過ごしていただけたらいいなと思っています」(たしろさん)



「子どもの本の学校」 34期 たしろちさとさん

たしろさんはこの日、『みんなのいえ』(掲載時は『みんなの家』)が掲載された「おおきなポケット」2001年9月号を持ってきてくださいました。じつは会場のお客さんにも、「おおきなポケット」をお持ちの方が!

「子どもの本の学校」 34期 たしろちさとさん

執筆当時につくっていたという「断面図」も。方眼用紙に描かれ、各部屋の高さや広さがきちんと考えられていることがわかります。

限定サインカードは、参加者だけの特典です

「子どもの本の学校」 34期 たしろちさとさん
「子どもの本の学校」 34期 たしろちさとさん

講演会終了後にはサイン会を開催。間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!

オンライン視聴の方は、対象書籍ご購入で、描き下ろしの特別サインカードをプレゼント!

たしろちさとさんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!

・たしろさんは、好奇心のかたまりですね。(中略)アフリカの動物見たさにキリマンジャロに登るなんて、常人では考えられない、好奇心を追求していく思いの強さを感じました。(東京都・男性)

・いろいろな編集者の方とお話ししていくうちにお話が出来上がっていくことと、絵を描くにあたって「よく見る」ことを大事にされておられることが、とても印象に残りました。(東京都・男性)

・かわいい絵本の作り主もまたかわいい人でした。話し方も声もチャーミング。内容は、愛にあふれていました。私も動物が好きなインドア派だから、話が合うかも、と勝手に思っています。絵本の始まりのお話、人との出逢い、動物たちとのふれあい、たしろさんの温かいエピソードに、ひきこまれました。(大阪府・女性)




[月刊クーヨン]25年11月号には、書ききれなかった講演内容を掲載!

クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]では、書ききれなかった講演内容を掲載しています。 たしろちさとさんの記事は、2025年11月号(10/3発売)に掲載!ぜひお読みくださいませ。

過去のレポート記事もご覧ください

過去の講演会のレポート記事を公開しています。「都合が合わず参加できなかった」「講演会の雰囲気や内容をちょっと見てみたい!」……という方は、ぜひチェックしてみてください!

「子どもの本の学校」34期はまだまだ続きます

作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」34期は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!




※本ページに表示されている商品価格等は講演会開催時点のものです。