【講演会レポート】大西暢夫さん(写真家、映画監督)/子どもの本の学校 35期
1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2025年で35期を迎えました。子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。
2026年1月の講師は、大西暢夫さん
大西暢夫(おおにし・のぶお)さんは……
写真家・映画監督の本橋成一(もとはし・せいいち、1940-2025)さんに師事し、自身も写真家・映画監督として活動。ダムに沈む村のひとびと、手仕事をつなぐ職人たち、障がいのある方とそれを支えるひとたちなどに長い期間寄り添って撮影と取材を行う。2025年、日本写真協会文化振興賞を受賞。著書に『お蚕さんから糸と綿と』『和ろうそくは、つなぐ』『ひき石と24丁のとうふ』(すべてアリス館)、『ホハレ峠』『やさしいカタチ』(ともに彩流社)、『ぶた にく』(幻冬舎)など多数。映画監督作品に『水になった村』『家族の軌跡―3.11の記憶から』『オキナワへいこう』などのほか、『炎はつなぐ』は同名書籍(毎日新聞出版)としても発売中。
講演会タイトル「循環する手仕事を撮り続けて」
師事していた写真家・映画監督の本橋成一(もとはし・せいいち)さんに、自分の撮りたい
ものを問われ、18歳まで生まれ育った岐阜県にある徳山村のひとびととその暮らしを撮ること
に決めた大西暢夫さん。その後、徳山村はダム建設のため1987年に編入合併されて廃止さ
れ、村のあった場所は2008年5月に徳山ダムとなりました。
「当初は日本最大級のダムの取材に行こうと思っていたんですけど、徳山村のひとたちのあま
りにも面白い生活にはまってしまって、ダムのことを忘れちゃうぐらい大好きになっちゃった
んです。ばあちゃんじいちゃんたちに『これ何』『それ何』と質問ばっかりして『兄ちゃんは
何も知らんな』みたいに言われながら、20年近く通い続けました。ダム建設のために、家が取
り壊される現実を目の当たりにしたときは、ぼくもばあちゃんたちと一緒に、撮影するカメラ
のピントを合わせられないくらい泣きました。カメラがオートフォーカスで良かったと思いま
す。そんなぼくを見て、『兄ちゃんも村のひとじゃな』と。長い期間通って、その場所やひと
を大好きになって撮ったり文章を書いたりするというぼくの取材スタイルは、徳山村で養われ
ていったのだと思います。
徳山村の暮らしで重要なもののひとつに、『灰汁(あく)』がありました。山のものを食べ
ようと思ったら、基本的には『あくぬき』をしないといけない。だから、灰(木灰、もくばい)
がいるんです。そこで薪を燃やした灰を取っておいて、綺麗に濾して、一斗缶に貯めていまし
た。当時のぼくにはただの灰にしか思えなかったけれど、ばあちゃんたちからは『この灰がな
いと、徳山村で生きていけん』と言われました。暮らすために火を起こして、食べるためにそ
の灰を使うということが、ひとつの循環になっていました。ぼく自身も、いま自宅で使ってい
る薪ストーブから出る灰も、捨てずに次へつなぐことが定着しています」(大西さん)
暮らしだけではなく、大西さんの取材も「循環」や「つなぐこと」が大きく関わっています。
なかでも徳山村の最後の住民・廣瀬ゆきゑ(ひろせ・ゆきえ)さんの生涯を追ううちに、さま
ざまな手仕事をする職人へと縁がつながっていったといいます。
「ゆきゑさんが『お蚕さん』を届けた徳山村出身の家を探し当てて話を聞くなかで、蚕から糸
を紡ぐ職人、その糸を真綿にする職人、その真綿を使って和ろうそくをつくる職人を取材させ
てもらえることになりました。さらに、和ろうそくの材料である蝋をつくる職人、蝋づくりで
出た灰を使う藍染の職人、藍染で残った灰を使う陶芸の職人……と紹介してもらいました。で
も、じつは手仕事そのものよりも、使われている植物や灰、灰汁のほうに興味があって。ごみ
を出さずにものづくりができる循環の仕組みは、徳山村のばあちゃんたちの暮らしと同じなの
だとわかりました」(大西さん)
大西さんの探究心のおかげで、日本にいても見過ごしがちな「循環」の面白さを、わたした
ちはあらためて知ることができています。
講演では、選りすぐった写真を見せていただきながら、お話をうか がいました。「じつはほとんど発表してないんですけど、徳山村以外にも、北海道から九州までの全国のダムを取材してきた30年分のフィルムが1,300本ほど、いま家にあって……」と大西さん。書籍や映画で見せてもらえる日がたのしみですね!
講演で紹介された本の一部をご紹介
特別サイン会&限定サインカードは、参加者だけの特典です
講演会終了後にはサイン会を開催。間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!
オンライン視聴の方は、対象書籍ご購入で、描き下ろしの特別サインカードをプレゼント!
大西暢夫さんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!
・ニュースでなかなか報道されず関係者しか知らない、ダムに沈んだ村や人々の暮らし、重度の障がいをお持ちの方などを時間をかけて取材されたことがとても印象に残りました。
開拓者の方々が、こころを開いて大西さんにお話しされたのは、大西さんのお人柄の影響が大きいのだと思いました。
大西さんの写真集をみながら、その方々の想いや人生に馳せてみたいと思います。
お身体に気をつけてこれからもご活躍下さい。(東京都・女性)
・今まで何十回とクレヨンハウスの「子どもの本の学校」に参加してきましたが、今日は一番おもしろくて感動しました。本当によかった。(東京都・女性)
・おばちゃんの豆腐の絵本に出会って、モノづくりが、こんなにも大切で、人の営みを未来に伝えるものであることを知りました。登場する方と作者との深い信頼があってこそだと思います。(大阪・女性)
・大西さんが長い時間をかけて、関係を作られて取材をされた重みを感じ、泣きそうになりながら読み終えました。丁寧な取材、1冊にかける情熱と時間を想像できました。自分の今の暮らしを見つめるきっかけにもなりました。(北海道・女性)
[月刊クーヨン]26年4月号には、書ききれなかった講演内容を掲載!
クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]では、書ききれなかった講演内容を掲載しています。 大西暢夫さんの記事は、2026年4月号(3/3発売)に掲載!ぜひお読みくださいませ。
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作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!
※本ページに表示されている商品価格等は講演会開催時点のものです。















