【講演会レポート】原田勝さん(翻訳家)/子どもの本の学校 35期

「子どもの本の学校」 35期 原田勝さん

1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2025年で35期を迎えました。子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。



2026年2月の講師は、原田勝さん

原田勝(はらだ・まさる)さんは……
翻訳家を目指すなかで翻訳家の金原瑞人(かねはら・みずひと)さんの講座を受講し、児童文学やYA文学を翻訳する面白さに目覚める。翻訳作品に『弟の戦争』(ロバート・ウェストール/作 徳間書店)『ハーレムの闘う本屋』(ヴォーンダ・ミショー・ネルソン/著 R・グレゴリー・クリスティ/イラスト あすなろ書房)『ウクライナ わたしのことも思いだして』(ジョージ・バトラー/文と絵 小学館)『シリアの秘密の図書館』(ワファー・タルノーフスカ/作 ヴァリ・ミンツィ/絵 くもん出版)ほか多数。『ぼくは川のように話す』(ジョーダン・スコット/文 シドニー・スミス/絵 偕成社)で産経児童出版文化賞翻訳作品賞を、『ねえ、おぼえてる?』(シドニー・スミス/作 偕成社)で日本絵本賞翻訳絵本賞を受賞。

講演会タイトル「子どもの本を訳す ─ 翻訳の裏側」

子どもの本やYA(ヤングアダルト=中高生を中心とした10代後半)文学などの翻訳を手がけている、原田勝さん。どうやって翻訳する権利を得るのか、英語と日本語の違いを踏まえて語り手の人称や視点・時制をどのように訳しているのか、ひらがなと漢字の使い分けをどのように決めているのか、1冊訳すためにどんな資料を調べているのか、など……翻訳家としてのご経験を元に、「翻訳の裏側」を話してくださいました。そんな原田さんがとくに多く訳しているのが、社会問題や戦争などをテーマにした作品です。

「最初から意識的にそういうものを訳そうとしたわけではなく、自分が興味をもったもの、好きだと思った作品を選んできた結果、そういう特色が出てきました。出版社からもそうした作品を訳すのが得意だと思ってもらったようで、同じような方向性の本の翻訳依頼が来ては訳し……という連続で、30年以上、翻訳の仕事を続けてきました。
同時に、訳した本が訳者をつくるという実感もあります。本を訳すためには、原文だけに向き合えばいいわけではなく、その本が書かれた背景だったり、書かれている内容が正しいかどうかだったり、いろんなことを調べなきゃいけない。そうして調べると、もちろんその後忘れることも多いですけど、多少なりとも学びます。そうやって翻訳の仕事をしてきたおかげで、いまの自分の頭の中ができていると言ってもいいぐらいなんです。それぐらい翻訳というのは、訳者に影響を与える仕事だなと思います」(原田さん)

いかにAIによる機械翻訳が発達しても、原田さんは「まだこの仕事を渡すつもりはない」と、きっぱり言います。

「文学は『再現芸術』とも呼ばれ、自分自身で再現しないと味わえません。だから子どもの本は、読み手である子どもが再現できるようなものにしなければいけない。原書通りに翻訳すれば事足りるわけではなくて、子どもたちが頭の中に情景が浮かべられるだろうかと考えて訳すことが、とくに大事なところだと思います。
また、戦争をテーマにした子どもの本の出版がだんだん増えているのですが、これは『子どもの本である』ということが重要だと、ぼくは思っています。なぜなら大人は、みんな子どもだったからです。戦争をしないために、子どもの頃にこういった作品に触れて、何がしかのことを感じるというのはとても大事だし、その子が大人になったら、子どもたちにもこういった本を勧めるのがすごく大事なことだろうと思って、翻訳の仕事をしているつもりです。
海外の本は、『横の広がり』があります。世界への眼差しというか、隣の国がどうなってるんだ、ヨーロッパでは何が起きてるんだ、アフリカではどうなんだという『横の広がり』です。日本の子どもたちにも、そういう視点にぜひ触れてほしい。とくに子どもの頃に触れてほしいし、大人になっても触れ続けてほしいと強く思っています。ぼくはこれからも、そういう本を翻訳していきたいと思っています」(原田さん)



「子どもの本の学校」 35期 原田勝さん
「子どもの本の学校」 35期 原田勝さん

『弟の戦争』の翻訳時は原書 “GULF”のコピーを元にしていたので、じつは手元に原書がなかったという原田さん。「原書を手に入れたくて、古本サイトで頼んだら、イギリスの中学校の図書室にあったらしい本が届きました。開くと、図書カードを入れる場所があるんです。どうして売りに出されてしまったのかはわかりませんが、これはこれでうれしい」(原田さん) 原書と日本版では表紙の絵も異なることにご注目。日本の子どもたちに手に取ってもらいやすいように、原書の出版社に相談のうえ表紙を変更することは、わりとよくあります。

弟の戦争

「翻訳家になる前の仕事でイラクに1年以上滞在したこともあり、湾岸戦争を舞台にしたこの作品に強く惹かれ、訳しました」(原田さん)

『弟の戦争』
ロバート・ウェストール/作
原田勝/訳
徳間書店/刊 1,320円(税込)

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「子どもの本の学校」 35期 原田勝さん
「子どもの本の学校」 35期 原田勝さん

講演会終了後にはサイン会を開催。間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!

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原田勝さんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!

・たいへん興味深くお話をうかがいました。原作を大切にされながら、人称や視点人物、時制などきめ細やかな配慮により、子どもにもわかりやすく魅力的な作品を届けてくださっているのだと感じました。(東京都・女性)

・今まで何十回とクレヨンハウスの「子どもの本の学校」に参加してきましたが、今日は一番おもしろくて感動しました。本当によかった。(東京都・女性)

・訳すときの言葉遣いや、呼称の整理など、翻訳家ならではの追求と配慮、作品を読むだけではわからない裏側のお話がたのしかったです。まだ読んだことのない本をこれから読みます!(東京都・女性)

・翻訳の裏側にあるご努力、そしてたのしさ、豊かさを知りました。戦争の本、ぜひ読みたいと思います。ありがとうございました!(会場参加・女性)




[月刊クーヨン]26年5月号にも、講演記事を掲載!

クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]にも、講演記事を掲載しています。 原田勝さんの記事は、2026年5月号(4/3発売)に掲載!ぜひお読みくださいませ。

過去のレポート記事もご覧ください

過去の講演会のレポート記事を公開しています。「都合が合わず参加できなかった」「講演会の雰囲気や内容をちょっと見てみたい!」……という方は、ぜひチェックしてみてください!

  • 大西さん
    「循環する手仕事を撮り続けて」
  • あずみ虫さん
    「アラスカ先住民と野生動物たち」
  • とよたかずひこさん
    「ちいさい人たちに届ける絵本創り」

「子どもの本の学校」35期、いよいよスタートです!

作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!




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