ロングセラー絵本『かぜがはこぶおと』創作のエピソード ~駒形克己さんより
風は音も、匂いも、しまい込んでいた記憶さえも、一緒に連れてきてくれる
制作のきっかけは、愛知県にある幼稚園の園長先生からの依頼でした。園の創立40周年を記念して、 絵本を関係者や保護者の方々へ手渡したい。できればオリジナルの絵本を、とのことでした。現地に赴くと、園は街から少し離れた小高い丘の上。そのとき、時折吹き抜ける風がとても心地よく印象的だったので、そのまま「風」をテーマに制作しました。
森をぬけ、丘をこえ、川から湖、畑へと風が吹く。葉っぱのこすれあう音。鳥のさえずり。風に乗って届く土の匂いは、どこか懐かしい。風は音も、匂いも、そして、しまい込んでいた記憶さえも、一緒に連れてきてくれる。足を止め、遠くから届く音に、耳を澄ましてみる。
>>特集/造本作家・駒形克己さんの世界