くろいの

いつもの道をひとりで帰っていると、へいの上すわっていた「くろいの」。
「くろいの」は、全身まっくろで、大きな目をしている。
何の生きものなのかは、よくわからない……。
バス停のベンチに座っていたり、花屋の店先にいたりするけれど、どうやらわたしにしか見えていないみたい。
ある日、「くろいの」についていってたどり着いたのは、古い一軒家。
「くろいの」とわたしは座敷でお茶を飲んだり、いっしょに天井裏であそんだり、ちょっと昼寝をしてみたり……。
モノクロなのにあたたかさを感じる、銅版画で描かれた風景と、そこに溶け込んだ少し不思議な時間。「くろいの」、あなたの近くにもいるかも！