監修者のことば
小宮輝之/元・上野動物園園長
生き物、とくに動物は、ほかの生き物を食べなければ生きていけません。ライオンはシマウマなどの草食動物をえものにしています。年老いたりけがをしたりして、本来のえものがとれなくなると人間をおそうことがあります。人食いライオンは危険生物です。
私はオオスズメバチに刺されたことがあります。秋の里山を散策しているとき巣をふんでしまったのです。痛い思いをした私にとってハチは危険生物そのものでした。でも、オオスズメバチにとっては大切なすみ家をふみつけた敵から巣を守るための当然の行動をとったにすぎないのです。
危険生物のレッテルは、人間にとって危険かどうかではられてしまいます。本当は危険生物たちも生きていくために、毒やつめやきばを使っているだけなのです。なぜ危険かを調べてみると、一生懸命生きているふしぎで魅力的な生態を知ることになります。危険生物をおそろしい存在として見るだけでなく、地球上の生き物の一員として、生物多様性をささえる存在として、見直していただければ幸いです。
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