~書店員さんから、コメントをいただきました~
♢未来屋書店 幕張新都心店 石橋明子さん
一軒の家を中心にして描かれる5組の家族の物語を通じて、ドイツの、その時代を一緒に生きたかのような読後感をもちました。
いつ、どこに生まれようと、時代の荒波と無関係ではいられない……。
この絵本を通じて湖のほとりの「あの家」が教えてくれる厳正たる事実は、今のこの状況だからこそ切実に訴えかけてくるのかも、と思います。
古いアルバムの写真のような、懐かしく美しい色合いのテッケントラップさんの絵、落合恵子さんのやさしい訳、現代版『ちいさいおうち』のような、大切にしたい物語です。
♢くまざわ書店 稲毛店 和田千恵さん
読み始めて、断片的な話の進み方にとまどった。
でも、途中で気が付いた。「あぁ、これは湖の家が享受できた情報だけで書かれているのだ」と。
動けぬ家は時の流れに身をまかせるしかない。けれど、私たちは何がおきたのか、なにがおきているのか知ろうとすることができる。
私たちの「家」が居心地の良い場所であるために行動することができるのだ。
そんなことをあらためて考えさせてくれた本でした。
♢幕張 蔦屋書店 後藤美由紀さん
戦争を家の視点から捉えることで、戦争の悲しさや非情さが静かに伝わってきます。
また、この家に対する著者の愛情が文章からだけでなく美しい絵からも感じられ、何度も何度も読み返したくなります。
戦争を描いた本はその悲惨さに読み返すことが苦しくなってしまいますが、そうなることがない稀有な作品ではないかと思います。
●トーマス・ハーディング/文
英国、ロンドンに生まれる。英米の大手新聞で執筆する作家でありジャーナリスト。英国のオックスフォードにテレビ局を設立し、数々のドキュメンタリーも制作。また、米国ウエストバージニア州の地方紙も運営し、2011年、同州司法協会からジャーナリストオブザイヤー賞受賞。この絵本の元になったノンフィクションは「コスタ賞」最終候補に。
●ブリッタ・テッケントラップ/絵
ドイツ、ハンブルグに生まれる。英国、ロンドンの芸術大学セントラル・セント・マーチンズと王立芸術学院で学び、絵本作家に。テキスタイルや雑貨などのデザインでも注目されている。ケイト・グリーナウェイ賞の最終候補になった『おなじそらのしたで』(ひさかたチャイルド)など、日本でも多数の絵本が翻訳出版されている。
●落合恵子/訳
作家。1976年よりクレヨンハウス を主宰。子ども、女性、高齢者、社会的に声が小さい側に置かれた人々、そしてオーガニックの視点で文化を明るく拓く提案を続ける。「さようなら原発1000万人アクション」「戦争をさせない1000人委員会」呼びかけ人。新刊は『明るい覚悟 こんな時代に』(朝日新聞出版)。