【講演会レポート】岡田淳さん(児童文学作家)/子どもの本の学校 34期

「子どもの本の学校」 34期 岡田淳さん

1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2024年で34期を迎えました。
子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。
“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。



2025年9月の講師は、岡田淳さん

岡田淳(おかだ・じゅん)さんは……
兵庫県出身・在住。小学校で図工教師として38年間勤務し、在職中に『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』(偕成社)でデビュー。以降、数多くのファンタジーを書き続けている。自身で作絵の両方を手がける作品も。演劇にも造詣が深く、自身の作品が演劇化されることも多い。著書に『学校ウサギをつかまえろ』(偕成社)、「こそあどの森」シリーズ(理論社)、『ネコとクラリネットふき』(クレヨンハウス)、教師時代の経験を元にしたエッセイ『図工準備室の窓から 窓をあければ子どもたちがいた』(偕成社)ほか多数。写真で手にしているのは、代表作のひとつである『二分間の冒険』(太田大八/絵 偕成社)。

講演会タイトル「ファンタジーとリアルと」

 現実である「リアル」と、現実とは異なる場所や体験を描いた「ファンタジー」。岡田淳さんは、リアルと地続きにあるファンタジーを多く書いて(同時に描いて)きました。
「ぼくたちの日常は、ファンタジーとリアルの組み合わせでできていると思うんです。
 近作の『ねがいの木』(植田真/絵 BL出版)では、聞き手の少女が、語り手のおばさんの話をファンタジーだと思って聞いていたら、じつはおばさんが体験したリアルだったと気づいて驚きます。同じく近作の『机の下のウサキチ』(偕成社)では、主人公の少年が机の下からウサキチたちのいる世界に行きます。帰ってきてから、じつは自分のおとうさんも子どもの頃にウサキチたちに会っていたのだと気づきます。どちらも、ファンタジーが突然リアルに結びつくわけです。言うなれば、リアル・ファンタジー・リアルの構造です。
 じゃあ、最初からファンタジーの作品は、リアルに結びつかないのか。30年以上書き続けてきた『こそあどの森』シリーズ(理論社)にも、リアル・ファンタジー・リアルの構造があります。たとえば『こそあどの森のないしょの時間』では、主人公スキッパーがお気に入りの場所に行くという日常(リアル)のなかで、木と会話するというファンタジーが起こります。木と会話するのはそのときだけのできごとで、またリアルに戻りますが、木に問いかけられた『将来何になりたいのか』という会話から、スキッパーはリアルに戻っても、自分の将来について考え続けます。ファンタジーに行って戻ってきたとき、行く前と戻ってきた後のリアルは同じではなくて、かならず変化があるものです。  ファンタジーに行って戻ってくることは、物語の中の人物にだけ変化をもたらすわけではありません。ぼく自身、子どもの頃から『ドリトル先生航海記』(ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波書店/刊)のひとつの場面を何度もくり返し思い出してきました。どうして何度も思い出したのか。大人になってから考えると、ぼくは『ドリトル先生航海記』から、人生は生きるに値する、悪いひとばかりじゃない、信用できる大人もいるといった肯定的なイメージを受け取っていて、それに力づけられてきたんじゃないかと。ぼくのいちばん好きな〈ドリトル先生の家の台所〉は、ファンタジーで、本当にはない。でも、ぼくのリアルに大きく影響を与えてくれた。だから、ファンタジーはかならずしも物語の中だけでリアルに着地する必要はなくて、読者のリアルに着地したっていいんです。
 世界戦争なんかなくて、みんな仲良く暮らしていける平和な生活を〈ファンタジー〉〈お花畑〉だと言うこともあります。でも、ぼくは、ファンタジーというのはリアルに着地できることを知っています。ということは、平和な世の中だって、かならずしも絵に描いたものと考える必要はないと思うんですね。実現できる、リアルに着地できるものだと、ぼくは思っています」(岡田さん)



岡田淳さんが、クレヨンハウスの「戦後80年特集」のために寄せてくれたメッセージには、「ぼくの人生はファンタジーに勇気づけられてきました」とあります。
*全文は、特設ページ(下記)にてお読みいただけます。

「戦後80年特集」の店頭での開催は25年9月末をもって終了いたしましたが、寄せられたメッセージと本は特設ページでご覧いただけます!

「子どもの本の学校」 34期 岡田淳さん

特別サイン会&限定サインカードは、参加者だけの特典です

講演会終了後にはサイン会を開催。間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!

オンライン視聴の方は、対象書籍ご購入で、描き下ろしの特別サインカードをプレゼント!

「子どもの本の学校」 34期 岡田淳さん

岡田淳さんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!

小学生の頃、図書司書の先生が「こそあどの森」シリーズをおすすめしていて知りました。おとなになってから本として手元においておきたく、少しずつそろえていっています。住宅の設計をする仕事についています。こそあどの住人たちのお家が、今の仕事をすることになったきっかけのひとつです。(大阪府/女性)

ちいさいときから岡田さんの本が大好きで、大学生になった今に至るまで何度も何度も読んできたので、今回こうしてお会いして話を聴かせていただく機会がとてもうれしかったです。岡田さんのファンタジーが今の僕に至るまでのリアルを作ってきたと思っています。これからもたくさんの作品をお待ちしています。そして、僕も児童文学作家への憧れがあり、きょうの岡田さんの大学生のときに自費出版をしたという話にも、改めて背中を押されたので、僕も誰かのリアルに届くようなファンタジーを作れるひとになりたいです。(京都府/男性)

小学生の頃、岡田淳さんの本が大好きで図書館にある本を全部読んでいました。はじめて「作家名」で検索し、他図書館から取り寄せし、“端から端まで全部読みたい”という気持ちが芽生えました。おとなになってから本からは少し遠ざかってしまいましたが、きょう、先生のお話を聴いて、ドリトル先生の台所のように、私もあの時のワクワクして夢中だった小学生のときの気持ちが、まるでファンタジーのようによみがえってきました。そして、リアルな現実の私も、やはり岡田さんの本が大好きです。そして、まさか、図書館で検索していた岡田淳さんにお会いできるなんて、きょう、私にとってのファンタジーがリアルになりました。小学校から今に至るまで、ワクワクする気持ちをたくさんありがとうございます。これからも何度も本を開いてファンタジーにひたらせていただきます。(千葉県/女性)




[月刊クーヨン]25年12月号には、書ききれなかった講演内容を掲載!

クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]では、書ききれなかった講演内容を掲載しています。 岡田淳さんの記事は、2025年12月号(11/1発売)に掲載!ぜひお読みくださいませ。

過去のレポート記事もご覧ください

過去の講演会のレポート記事を公開しています。「都合が合わず参加できなかった」「講演会の雰囲気や内容をちょっと見てみたい!」……という方は、ぜひチェックしてみてください!

「子どもの本の学校」34期はまだまだ続きます

作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」34期は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!




※本ページに表示されている商品価格等は講演会開催時点のものです。