【講演会レポート】ザ・キャビンカンパニーさん(絵本作家、美術家)/子どもの本の学校 35期

「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん

1991年5月よりスタートした、クレヨンハウスの「子どもの本の学校」連続講座は、2025年で35期を迎えました。子どもの本の専門店として、作家と読者が出会う場所をつくりたいとの思いが出発点。“子ども”をキーワードに、子どもについて、子どもの本について、子どもをとりまく大人の世界について、ご一緒に楽しみながら考えていきたいと思います。



2026年8月の講師は、ザ・キャビンカンパニーさん

ザ・キャビンカンパニーさんは……
阿部健太朗(あべ・けんたろう)さんと吉岡紗希(よしおか・さき)さんによる2人組。ともに大分県生まれ・在住。アトリエは、廃校になった「現存する由布市最古の木造小学校」。大学時代からふたりで創作活動をはじめ、絵本・立体造形・アニメーションなど様々な作品を生み出し、国内外で発表している。大絵本美術展『童堂賛歌(どうどうさんか)』などの大規模展示も開催。『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版)で絵本作家デビュー。作品に、『しんごうきピコリ』『がっこうにまにあわない』(あかね書房)、『ねんねこ』『ゆびさしちゃん』(小学館)、『ミライチョコレート』(白泉社)、『なきむしなきこちゃん』(福音館書店)など多数。10月には最新絵本『おくりもの』(偕成社)が刊行予定。https://the-cabincompany.com

講演会タイトル「わたしたちと絵本」

 阿部健太朗さんと吉岡紗希さんのおふたりで活動する、ザ・キャビンカンパニーさん。大きな美術作品を置く場所がほしかったのと、廃校が増えているという話を聞いたことをきっかけに、大分県由布市の廃校を自分たちのアトリエとして使わせてもらっていると言います。

「絵本『ちいさなおうち』(バージニア・リー・バートン/文・絵、石井桃子/訳 岩波書店)は、自然がどんどん人工物になっていくというお話しですが、ぼくらのアトリエでは逆のことが起きていると思います」(阿部さん)
「人間のほうが少ないので、自然に人工物が飲み込まれています。本当に自然のエネルギーが強くて、たとえば木を剪定しても、半年ぐらいですぐに伸びちゃう」(吉岡さん)

 そうした「人工物が自然に飲み込まれていく感覚」が作品にも生かされ、さらに、さまざまな生きものに出会うことも作品づくりにつながっています。アトリエでは、ノウサギ、サル、シカ、フクロウ、イノシシ、アオダイショウ、それにカブトムシなど虫を見かけるほか……。

「いち押しの生きものの絵本を書きました。それが『カサコソのかくれんぼ』(偕成社)。おそらく世界初の、ゴキブリさがし絵本です。ぼくらは、ゴキブリがそんなにきらいじゃない。なのに、世間からの評価はものすごく低いので、それでいいのかと思って」(阿部さん)
「だから、評価を上げるためにこの絵本をつくりました」(吉岡さん)
「いつも『みんなが思っていることは、本当なのか』と考えていて、それがアイデアの引き出しになったりします」(阿部さん)

 絵本をつくるうえで、人間の【核】と【膜】というものもつよく意識しているおふたり。【核】とは、そのひとの中にある根幹の部分、年齢によらない「こども」の部分のこと。【膜】とは、【核】を覆う、常識などのことで、これを纏っていくと年齢によらない「おとな」になっていくのだと考えています。

「いつでも【核】に戻っていけるような、薄く、透明感がある【膜】をつけていきたい。もしこの【膜】が厚くて濁っていて、【核】が見えなくなっちゃうと、生きていくのがすごく苦しくなってしまう。だから、芸術や自然を見ることによって時間やしがらみなど人間がつくり出した概念を忘れ、【核】に戻ることが大切だと思っています 」(吉岡さん)
「でも一方で、美しい【膜】を重ねることには素晴らしさもある。何もないところに概念や意味を見いだせるっていうのは、人間ならではの喜びですよね。水はただの水なのに、水を神様と思うひともいるし、H2Oというひともいる。美しいと思うひとがいれば、恐ろしいと思うひともいて。自分自身で世界に意味をつけられるというのは、人生において救いになると思うんです。なので最近は【核】と【膜】の両方を、絵本で表現したいなって思っています」(阿部さん)

 凝り固まった常識という【膜】を取り払って、【核】が震えるたのしさや感動を届けること。無意味で無秩序で迷子になりそうな【核】の世界に、【膜】という道しるべを届けること。それが、おふたりがつくる絵本であり、これからもつくり続けていきたい絵本です。 



「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん

講演会当日は、冒頭に『なきむし なきこちゃん』(福音館書店)の表紙絵を黒のみで描いてくれました。こちらの絵は、オンライン購入特典の特別サインカードにもなっています。

『なきむし なきこちゃん』
ザ・キャビンカンパニー/作
福音館書店/刊
1,870円(税込)

「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん
「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん

『カサコソのかくれんぼ』の読み聞かせ後、「じつは会場にもカサコソがいます!」とおふたり。参加者のみなさんに、天井の空調から見下ろすカサコソを探してもらいました。

特別サイン会&限定サインカードは、参加者だけの特典です

「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん

講演会終了後にはサイン会を開催。
間近でお話ししながら直筆サインを入れていただける貴重な機会です!

「子どもの本の学校」 35期 ザ・キャビンカンパニーさん

オンライン視聴の方は、対象書籍ご購入で、描き下ろしの特別サインカードをプレゼント!

ザ・キャビンカンパニーさんの講演会に参加されたお客さまの声をご紹介!

・画面を通してではありますが、直接お話しを伺えて、お二人のお人柄にも接することができました。制作秘話も伺えて楽しいひと時になりました。今回は会場参加がかなわず、対面でお話しを伺ったりパフォーマンスに触れることができなかったことが残念です。2年前に会場で参加したことがあり、サイン会等とても楽しい時間が思い出されます。これからも、絵本作家の先生方の楽しい講演を心待ちにしています。(愛知県/オンライン参加)

・人間の「核」や「膜」のお話しが特に心に残っています。新作絵本も楽しみにしております。(長野県/オンライン参加)

・お二人の熱い思いが伝わってきて良かったです。他のイベントにも足を運んでみようと思います。 (東京都/会場参加)

[月刊クーヨン]26年11月号にも、講演記事を掲載!

クレヨンハウスの育児雑誌[月刊クーヨン]にも、講演記事を掲載しています。 ザ・キャビンカンパニーさんの記事は、2026年11月号(10/3発売)に掲載!ぜひお読みくださいませ。

過去のレポート記事もご覧ください

過去の講演会のレポート記事を公開しています。「都合が合わず参加できなかった」「講演会の雰囲気や内容をちょっと見てみたい!」……という方は、ぜひチェックしてみてください!

  • 長谷川さん
    「絵本で心が楽しくなりますように」
  • ヨンナさん
    「The Rabbit Family: Origins and Background」
  • 岩瀬さん
    「子どもの本とわたし」
  • 鈴木さん
    「僕には鳥の言葉がわかる」
  • 五味さん
    「タイトルはあとから決めよう」
  • 原田さん
    「子どもの本を訳す ─ 翻訳の裏側」
  • 大西さん
    「循環する手仕事を撮り続けて」
  • あずみ虫さん
    「アラスカ先住民と野生動物たち」
  • とよたかずひこさん
    「ちいさい人たちに届ける絵本創り」

「子どもの本の学校」35期も充実の講師陣です!

作家と読者を結ぶ講演会イベント、「子どもの本の学校」は、まだまだ続きます!
この出会いが、一生を変えるような忘れられない大切な一冊との出会いになるかもしれません。
どこまでも自由な絵本の世界の魅力を、もっともっと知ることができる講演会イベントです。
ご参加を、お待ちしております!




※本ページに表示されている商品価格等は講演会開催時点のものです。